インタビュー interview
【レキサス】20年経っても”ベンチャー”。40歳を過ぎて見つけた新しい仕事観とコーヒー農園を開く夢
様々なクラウド型システムを開発するなどしている株式会社レキサスは、設立20年と県内でも歴史・実績豊富なIT企業の1つです。同社でWebディレクターとして活躍しているのが、東京都出身で2015年に”嫁ターン”した高橋武紀さん。東京で長く活躍していた中、なぜ一家での移住を決めたのか。そこには、高橋さんが探していた仕事の価値観、夢を叶えるためのフィールドが広がっていました。
株式会社レキサス Webディレクター
高橋武紀さん
東京都葛飾区出身。大学卒業後、フリーランスや派遣社員として複数のWeb制作会社で制作業務を担当。その後、都内のIT系コンサルティング・制作会社にWebディレクターとして10年、鉄道グループ傘下の広告代理店に5年勤務。2015年12月、沖縄へ移住しレキサスに入社。沖縄出身の妻と11歳の長男、6歳の長女と4人暮らし。
沖縄へIターンした経緯について
40歳。「最後のチャンスになる」
妻が沖縄出身という「縁」があったことが大きかったですね。11年前に長男が生まれてから、毎年のように里帰りで沖縄を訪れていましたが、その頃から「子育てする環境」や「働く環境」として魅力を感じていました。移住を検討し始めた頃から唯一の不安材料だったのは、仕事です。仕事が決まったら、行こう。そう考えている中で、レキサスから内定をもらい、移住が実現しました。
レキサスの存在を知ったのは、東京で開催された沖縄のUIターンイベントでした。担当者から聞いた会社のビジョンや方針に強く共感したんです。その後、前職の広告代理店の職場環境や方針が次第に合わなくなってきました。当時、40歳です。転職するにも、子育ての環境を変えるにも、ギリギリのタイミング、最後の機会になるーー。そう思って、レキサスへの転職と移住を決断した経緯があります。
ITで沖縄経済を盛り上げる。代表のビジョンに惹かれ…
レキサスのどんなところに惹かれたのか。それは、ITビジネスで沖縄経済を盛り上げようという壮大なビジョンです。在日米軍基地による経済効果が少なくないと言われる中で、それに頼らずに自立・自力型の経済圏をつくるーー。代表・比屋根隆の思いは、私にとって思いもよらないものでした。
今でこそ全国各地でローカル発のビジネスや活動は増えていますが、当時はまだそういう動きは珍しかったと思います。実際、レキサスはプロダクトを自社開発するなど精力的に活動していました。その姿勢が印象的で、輝きを放っているように見えました。将来性を強く感じたんです。
東京のイベントで存在を知ったときから、実際に入社するまでには約2年の期間が空きましたが、ずっと「沖縄で働くならレキサスしかない」と思ってました。
現在の会社について
20〜30代中心で、エンジニアが多数在籍
▲ウェディングアルバム作成クラウドサービス「PhotoBridge」
▲動物病院向け経営・会計クラウドサービス「ハロペ H」
レキサスは、クライアントの要望に応じてWebのシステムやサイト、アプリなどの企画から開発まで様々な事業を手がけています。レキサスが企画段階から携わったプロダクトしては、ウェディングアルバム作成クラウドサービス「PhotoBridge」や、動物病院向け経営・会計クラウドサービス「ハロペ H」 などがあります。
社員はエンジニアが約20人、デザイナーが約10人と技術職が中心です。世代は新卒を含めて20代から中堅の30代、そして私を含めて40代と幅広く、若いメンバーを中心にほどよい落ち着きと活気があります。UIターンや女性メンバーも活躍しています。Iターン者には、私と同じように妻が沖縄出身という理由で移り住むケースが多いですね。
チームの”一体感”強く。自主的に社内勉強会も
主力メンバーであるエンジニアとデザイナーの距離感は近く、互いにそれぞれの仕事や価値観を尊重する風土があります。またメンバーは、クライアントに対しても社内のメンバーに対しても、話をよく聞くし、難しい課題もなんとか解決する方法を探るために活発に議論しています。チーム一体でスピード感をもってクライアントが求める価値を提供する。これは、レキサスの強みの1つでしょう。
何より、会社設立から約20年経ちますが、今もなおベンチャー気質が根強く残っています。新しいことにどんどん取り組み、会社の価値を高めていこう。そういうチャレンジ精神が強くあります。一体感とチャレンジ精神。どちらも当たり前と言われればそれまでですが、長く維持し続けることは、そう簡単ではないはずです。
社員は互いのスキルアップにも熱心です。チーム内で日々、どういうスキルを磨く必要があるかなどを共有していますが、例えばそのスキルや知識に長けた人に講師を頼んで、社内で勉強会を開くなどしています。また、レキサスは県内外に取引先以外にも幅広いネットワークをもっています。東京に比べれば勉強会などの回数自体は少ないかもしれませんが、意欲や興味さえあればコミュニティを広げ、学べる環境はありますよ。
現在の仕事について
地方は経験やスキルを光り輝かせる場所
私の職種は、Webディレクターです。Webサイトやシステム開発プロジェクトにおけるディレクション、およびデザイン部門のマネジメントが主な役割です。東京で培ってきた経験が、ここで活かせていると思います。
移住して感じるのは、沖縄をはじめとする地方では、自分の経験やスキルが光り輝くことです。とにかく会社や人が多い都会では、特異なスキルをもった貴重な存在になることは難しい面があります。ただ、ここでは貴重な戦力としての実感を得られやすい。今まで培ってきたスキルをブラッシュアップして、キラリと光り輝かせる。それが実現しやすい環境があることが、移住のメリットではないでしょうか。
年収は減っても、意義とやりがいのある仕事
私の場合、レキサスで働くようになってから、仕事の価値観も変わりました。ここでは今、沖縄と日本各地とのローカル同士がつながるようなプロジェクトにも携わっています。例えば、徳島県上勝町で展開している「いろどり事業」の業務支援があります。料理に添える「つまもの」の卸販売を手がける地元法人とともに、生産者と料理店などの取引先をつなぐ受発注システムを共同開発したんです。
上勝町では、地元の農家たちがこの「つまもの」を販売することで収入を得て、高齢ながらも生き生きと暮らしています。例えば、山奥に住む一家では高齢の夫婦と息子夫婦の4人が1台ずつパソコンをもち、その受発注システムを使って入札を競い合っているような光景も目にします。地方には今、高齢化や過疎化など様々な課題がありますが、同じローカルに身を置く企業として、こうした地方の現場を支援し、課題解決につながるようなプロジェクトに携われるのは意義深いですね。
東京にいた頃は、大企業・メガブランドの受注案件や、話題を集める販促キャンペーンなどに興味がありましたが、今はITの力を使って地方創生や沖縄経済を盛り上げるようなプロジェクトが意義深く、その制作に携われていることに価値とやりがいを感じています。
移住前と比べたら、年収は随分減りましたよ。でもだからこそ、減るなりの意義を見つけないと、きっと意味がないし、何より楽しくありません。たとえ年収は減っても、自分のやりたいことができる。大きな意義を感じながら働ける。これは、私が非常に大切にしている視点です。
沖縄へIターンして
念願だったコーヒー農園を開く夢へ一歩
私は、ライフワークでも「やりたいこと」を今、実践しています。それは、コーヒー農園を開く夢です。昔からコーヒーが好きで、いつか自分でも育ててみたいと思ってました。「移住後に何か新しいことをしたい」と考えたときに、パッと思い浮かんだのです。親戚の畑の一角を借りて、1本の苗を育てるところから始めました。今、その苗は50本くらいにまで増えました。今秋冬には収穫、焙煎して、ようやく自作のコーヒーを飲めることになりそうです。地元のコーヒー生産者組合にも入っています。
こうした本業+α(アルファ)の「もうひとつやりたいこと」を叶えるのには、何をするにも高いお金が必要な東京よりも、地方の方が実行しやすい環境にあるはずです。レキサスは副業が許されているので、5年後くらいには本気でコーヒー農園を経営したいと思っています。
休日はコーヒー栽培のほかに、長男の少年サッカーの練習や試合に付き添うことが多いですね。サッカーの父母会にも入っていますが、何より子供自身がサッカーを通じて、地元の友人コミュニティに一気に溶け込んでいきました。大人も子供も、一度そういうコミュニティに属してしまえば、自然と友人や知り合いはできるでしょう。
奥が深い「沖縄そば」。都会に負けないパン、酒も
今、私たち家族はうるま市にある妻の実家で暮らしています。これは偶然ですが、レキサスのオフィスも市内にあり、車で10分ほどで通勤できます。
やっぱり、沖縄は温暖ですね。寒い日に駅のホームで帰りの電車を待つ、なんてことは一切なくなりました。もう当たり前の景色になりつつありますが、空や海、植物などの自然は圧倒的に美しい。「食」も魅力です。沖縄そばは店によってかなり味が異なり、都会に負けないほど美味しいパンやお酒も多い。沖縄を盛り上げようとしている若い店主やクリエイターなども多いので、日々飽きずに、楽しく過ごせています。
沖縄へのUIターンを考えている人へメッセージをお願いします。
まずは、仕事・職場を決めること。あともう1つ、「移住したらこれは絶対楽しむ」というものをもって動いた方が、うまく定着でき、生活を楽しめるのではないでしょうか。
地方移住というと、仕事が少し楽になるようなイメージをもつ人も少なくないでしょう。ただ、必ずしもそうではありません。私自身が、まさにそうでした。都会と同じようなスピード感で日々動いています。つまり、沖縄はこれからもどんどん変化していくことでしょう。そんな未来に向かって、自分の人生にとって意義深いもの、大切なものを一緒に見つけに行きましょう。
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